SBI証券と楽天証券は、9月30日と10月1日からそれぞれ国内株式の売買手数料を無料にすると発表しました。これは国内証券会社で初めてのことです。
手数料無料化する両社の狙い
SBI証券と楽天証券は、2024年に新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まるのを前に、個人の投資を呼び込む狙いがあります。この制度は、個人の資産形成を促すとともに、日本の株式市場の活性化にも寄与すると期待されています。
SBI証券と楽天証券は、米国のネット証券で主流の株取引手数料ゼロが日本でも広がる可能性があると目論んでいる。米国では、証券取引所から証券会社へのリベートがあるため、手数料を無料にしても売上は一定確保できます。しかし、日本ではリベート制度がないため、無料にすれば売上は純粋になくなり、証券会社の利益を圧迫することになります。
SBI証券と楽天証券は、売買手数料に依存しない収益モデルの構築が必要になります。
SBI証券と楽天証券は、手数料無料化によって売上が減少することを見越して、他の収益源の確保を目指しています 。
SBI証券は、銀行や保険、デジタル資産といったSBIグループ会社に送客することで、グループ全体の収益拡大を狙っています 。
楽天証券は、楽天ポイントや楽天カードなどの楽天グループのサービスと連携することで、顧客のロイヤリティを高めています 。
この無料化の波は、他のネット証券や対面営業を主力とする証券会社にも影響を及ぼします。ネット証券では、マネックスグループや松井証券などが無料化に追随しない方針を示しています。対面営業の証券会社では、手数料の比重が依然として大きく、対面取引の付加価値がこれまで以上に問われてくるでしょう。
2022年3月期の日本の証券会社の売上高ランキング
第1位:野村證券 2兆1,000億円
第2位:大和証券 1兆9,000億円
第3位:SMBC日興証券 1兆6,000億円
第4位:SBI証券 1兆6,000億円
第5位:みずほ証券 1兆3,000億円
第6位:楽天証券 7,000億円
このランキングから、SBI証券と楽天証券は、総合証券に比べて売上高では劣るものの、ネット証券としてはトップクラスの規模であることがわかります。特にSBI証券は、総合証券と肩を並べる売上高を誇っています。
2021年3月期の日本のネット証券の預かり資産残高ランキング
第1位:SBI証券 19.3兆円
第2位:楽天証券 11.6兆円
第3位:マネックス証券 4.8兆円
第4位:松井証券 4.5兆円
第5位:auカブコム証券 3.8兆円
このランキングから、SBI証券と楽天証券は、預かり資産残高では他のネット証券を大きく引き離していることがわかります。特にSBI証券は、楽天証券に対して約1.7倍の預かり資産残高を持っています。SBI証券の1口座あたりの預かり資産残高は約300万円であり、楽天証券の約230万円よりも高いことがわかります。
まとめ
SBI証券と楽天証券は、手数料無料化によって個人投資家の取引回数や口座数を増やすことで、預かり資産残高や資産運用商品の販売を増やすことができます 。預かり資産残高や資産運用商品の販売は、手数料収入よりも安定的な収益源となります 。また、個人投資家の取引回数や口座数が増えれば、証券会社のブランド力や市場シェアも向上していくと考えています 。
参考
・SBI証券は、2023年4月から6月までの3か月間で、新規口座開設数が 約30万件 に達し、前年同期比で 約2.5倍 に増加したと発表しました。また、同期間の国内株式の売買代金は 約35兆円 で、前年同期比で 約1.8倍 に増加しています。
・楽天証券は、2023年4月から6月までの3か月間で、新規口座開設数が 約20万件 に達し、前年同期比で 約2.4倍 に増加したと発表しました。また、同期間の国内株式の売買代金は 約25兆円 で、前年同期比で 約1.9倍 に増加しています。
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