岸田首相は25日、10月中の策定を目指す経済対策の骨子を発表した。物価高対策や持続的な賃上げなど5本柱で、26日に関係閣僚に指示する。対策の財源となる2023年度補正予算案については「速やかに編成に入りたい」と強調している。
岸田首相の掲げた経済対策5本柱
〈1〉物価高への対応
物価高に苦しむ国民に税収増などの成果を還元するため、生活必需品やエネルギーの価格安定、持続的な賃上げ、年収の壁の解消などを目指す。
〈2〉持続的な賃上げと地方の成長
円安を生かして国内投資を促進し、雇用と所得を拡大するため、特許やストックオプションなどの所得に対する減税制度の創設や充実、地方創生や観光振興などを推進する。
〈3〉国内投資の推進
新しい資本主義を実現するため、イノベーションやデジタル化を加速させるため、研究開発や人材育成、インフラ整備などに投資する。
〈4〉人口減少対策
人口減少による経済の縮小を防ぐため、出生率の向上や移民政策の見直し、女性や若者、高齢者の就労支援などに取り組む。
〈5〉国土 強靱きょうじん 化など国民の安心・安全の確保
自然災害や感染症、テロなどのリスクに備えるため、防災・減災や医療・福祉、外交・安全保障などに関する施策を強化する。
ただ、財源を裏付ける補正予算案は規模が膨らむことが避けられない見通しとなる。補正予算の財源はこれまでも借金である新規国債の発行に多くを頼っており、財政がさらに悪化するおそれがある。コロナ禍以降、数十兆円の規模に膨らんだ歳出の正常化への道筋は不透明だ。首相の25日の発言からは「税収増等を国民に還元したい」「税制や社会保障負担の軽減など、あらゆる手法を動員する」と、積極的な財政出動への意欲がにじみ出ていた。
岸田首相の経済対策が実現可能かどうかは、様々な要因によって左右される。
例えば、以下のような点が課題となるでしょう。
・財源の確保:経済対策の財政支出は過去最大の55.7兆円となり、新規国債の発行に頼ることが予想されます。しかし、国債発行は財政赤字を拡大させ、将来の負担を増やすことになります。財源を確保するためには、税収増や歳出削減などの対策が必要ですが、その実現性は低いと言われています。
・政治的な課題:経済対策は与党の「バラマキ」要求に抵抗しきれなかった岸田政権の弱腰の姿勢が反映されているという批判があります。また、野党は経済対策の規模や内容に反対しており、国会での審議や成立に時間がかかる可能性があります。政治的な混乱や遅滞は、経済対策の効果を減らすことになります。
・経済的な効果:経済対策の目的は、コロナ禍で苦しむ国民生活を守り、自律的な経済成長を実現することです。しかし、専門家の間では、経済対策がその目的を達成できるかどうかに疑問が持たれています。例えば、物価高への対応は一時的な救済に過ぎず、持続的な賃上げや国内投資の促進は税制や助成金だけでは不十分であるという指摘があります。また、人口減少対策や国土強靱化などは長期的な視点が必要であり、短期的な経済効果は期待できないという見方もあります。
日本の景気が回復する見込みについては、様々な見方がありますが、一般的には緩やかな回復が続くという予測が多いようです
第一生命経済研究所は、2023年度の実質GDP成長率の見通しを前年比+1.7%としています。内需の押し上げにより景気は緩やかに回復すると見ていますが、外需は低調に推移し、下押し要因となると予想しています。
野村證券金融経済研究所は、2023年度の実質GDP成長率の見通しを前年比+1.4%としています。個人消費や設備投資など内需が主たる景気押し上げ要因となると見ていますが、コロナ禍の影響や物価上昇などのリスクも指摘しています。
三井物産経済研究所は、2023年の実質GDP成長率の見通しを前年比+1%台としています。日本は欧米と比べてコロナ禍からの回復が遅れていたが、2022年には感染症と経済活動の両立が進む中で順調に回復したと分析しています。
日本の景気回復については、内需主導の緩やかな回復が続くという見方が一般的ですが、そのペースや持続性については不確実性が高いと言えます。
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